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吉田光成
専修大学大学院博士後期課程 修士(心理学 / 社会学)
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大切なことは2点だと思います。
①蛙化現象の体験は人間にとってどんな意味がある体験なのか?
②あなたの大切な体験を”蛙化現象”とひとくくりにして理解してしまっていいものなのか?です。①ですが、蛙化現象は病気ではありません。
例えば、私たちは不安を感じることがありますが、これ自体が悪かったり病気だったりするのではありません。
不安は、自分の心が感情や感覚という形で「自分は今何か良くない状態にあるぞ」と、自分では上手く意識できていない危機や危険を私たちに教えてくれていると考えることができます。
蛙化現象も同じで、恋愛という対人関係の中で生理的嫌悪感という感情や感覚という形で、自分では上手く意識できていない何かを教えてくれている心の働きだと考えられます。
このような心の働きはとても自然だし大切なことなので、対処したり治したりというよりも、この感情や感覚を大切にしてあげて、心が私たちに何を教えてくれているのかを考えてみるのがいいかもしれません。
なお、これをひとりでずっと考え込むのはとても苦しいことなので、信頼できる誰かとお互いに気持ちを伝え合いながら一緒に考えられるといいと思います。そして②ですが、最近蛙化現象という言葉が「相手の言動で冷めた」という意味で笑い話のように使われています。
一方で、好意を感じていた相手から自分に好意を向けられたことで生理的嫌悪感を感じてしまうという本来の意味での蛙化現象体験は、経験者本人でもその理由がわからずに自分がおかしいと感じてしまうような苦しい体験であることが研究によりわかりました。
つまり、笑い話として話せるようなものでないは本来の蛙化現象という言葉の使われ方と、苦しんでいる経験者を笑い話で傷つけるような蛙化現象という言葉の使われ方の、大きく2つが最近混在してしまっていると問題に感じています。あなたの”冷めた”体験で生理的嫌悪感を感じているのであれば、蛙化現象かもしれませんが、もしかすると違う体験かもしれません。
恋愛関係と一言で言っても、実は様々な状態があることがわかっています。
例えば、カナダ出身の心理学者のLeeという人が分類した恋愛のタイプは6つもあるといわれており、恋愛の数だけ様々な関係の形があるといっていいかもしれません。
誰かの作ったラベルを使って関係を考えることよりも、あなたにとって大切な気持ちや関係である”自分にとっての相手との恋愛関係”がどのようなものなのかを、信頼できる人と率直に語り合って、自分なりに理解を深めていくことが大切なのではないかと思います。
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ラビアナ
性教育ドラァグパフォーマー
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蛙化現象、なかなか悩ましいよね・・
私も親密になるにつれ、ふと冷めてしまうことが何度かあったの。
私が調べていくとたどり着いた答えとして、3つ紹介するね!まずは「フレイセクシュアル/フレイロマンティック」という性的・恋愛的指向について。
これは多様な性のあり方のうちの一つで、初めて会った人やあまり親しくない人には恋愛のような気持ちや性的な魅力を感じるけど、その関係が深まるにつれて、その気持ちや魅力が薄れたりなくなったりすることがあるっていうことなんだ。
初対面の人やあまり知り合いじゃない人にだけ恋愛の気持ちを持つ場合、それを「フレイロマンティック」と言うんだよ。
実際に関係を深めていく中で、嫌いになったりするわけじゃないけど、性的な気持ちや恋愛の気持ちがなくなることがあるらしく、その過程は人それぞれ違うらしい。次に「逆誘惑現象(Counter-Attraction Phenomenon)」について。
これはだれかが自分に好意を持ってくれると、逆にその人に対する興味や魅力が薄れてしまう心理現象なんだって。
相手からアプローチされたり好意を持たれると、なぜかその人にあまり興味が持てなくなることがあるんだって。
これは人によって違うけど、恋愛や友情などの関係でよく見られる心理的な反応とされているらしいから心配することはないと思うよ。最後に「付き合う」といった考え方からの解放。
私たちの周りの漫画やドラマでは、主人公が好きな人と結ばれて末永く幸せに暮らすという話をたくさん聞くよね。
小さい頃からそういった話を聞くことで、「好きな人」と「付き合って」「結婚して」「子供を授かり」「末永く幸せに暮らす」ということが普通であり、それ以外は無いものとして見られちゃうよね。
だけど、人と人との関わりはそんな単純なものでは無いよね。
だから私が実践しているのは必ずしも「付き合う」という形がなくても関係性を築くこと。
彼氏/彼女やパートナー同士といったレッテルを気にせず、二人にとって居心地の良い関係性を築くことを大事にしているよ。私たちの周りの漫画やドラマでは、よく主人公が好きな人と結ばれて、ずっと幸せに暮らす話を聞くでしょ?
でも、実際の人間関係はそんなに単純じゃないと思うんだ。
小さい頃からそういう話を聞いてると、「好きな人」と付き合って結婚して子供を持って幸せになるのが普通だと思っちゃうけど、必ずしも「付き合う」とか「結婚する」という形にこだわらず、お互いが心地よい関係を築くことを大切にしてるんだ。
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kokone
セイシルサポーター/大学生
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私自身、蛙化現象の経験があります。
自分の経験から言うと、蛙化現象が起こったのは自分のことを愛することができなかったことが原因だったのではないかと思います。「自分は愛されるに値しない人間だ」と思い込んでしまい、実際に自分が愛されたときに「自分は愛されるわけない」ということを正当化するために、パートナーのことを嫌いになるのではないか、と今では考えています。
自分の価値を低く思ってしまえば思ってしまうほど、「愛されている」ことを受け入れられずに、「愛されていない自分」を作るための行動に走ってしまいます。ですが、私は人は何の条件もなく、価値があると考えています!
それは自分自身も例外ではないはずです。
ぜひ、自分を愛することを頑張ってみてください。私自身も、「恋愛に向いていない」と今でも思うことがありますが、自分なりに愛し方や愛され方を見つけることを模索しています。
パートナーシップには様々な形があります。
たとえ、蛙化現象があったとしても、愛し愛される「健全な関係性」という世の中の価値観に合わせて恋愛をする必要もないなと感じています。
だから、自分が心地いいと感じる関係性を突き詰めることも選択肢の一つです。また、パートナーに蛙化現象を起こされて傷ついた人もいると思います。
自分が愛すると、相手に拒絶されるという絶望感から次の恋愛や関係性に支障が出てしまうかもしれません。
蛙化現象を起こしてしまう人が悪いとは思いませんが、お互いの自分を尊重する気持ちと相手を想う気持ちのバランスを上手くとることができるとすごくいい関係性になるのかなと思います。