セックス なぜ だめ 大人

なぜ親や先生はセックスを嫌がるのか

なぜ親や先生はセックスを嫌がり、ダメって言うんでしょうか。自分たちはしてるのに。

  • 水野哲夫
    水野哲夫

     “人間と性”教育研究協議会(性教協)代表幹事、『季刊セクシュアリティ』誌編集長

  • 親や先生が、あなた(未成年者だと仮定します)がセックスすることを「ダメ」と言っているとして、それはセックスを「嫌がっているから」なのでしょうか。

    セックス以外に、大人には許されているけれど、子ども(未成年者)には許されていないことはたくさんあります。
    お酒、タバコ、運転免許、投票、契約、借金などなど…。
    「自分たちはしてるのに」子ども(未成年者)には禁止しています。
    同じ人間のはずなのになぜこういう差がつけられているのかを考えてみてください。

    子どもの体には害がある・子どもにはまだ判断する力がない・何かトラブルがあった時に子どもには責任を負う力がない・子どもを守るために必要だ、などの理由が挙げられるでしょう。

    セックスは、愛情表現やコミュニケーションとしてのはたらきも持った大切な行為ですが、予期しない妊娠と性感染症感染というリスクも持っています。
    また、いろいろな意味でのその人の持つ「力」に大きな格差がある場合、性暴力に変わってしまう可能性も持った行為です。
    「力」の弱い子どもを性暴力から守る必要があります。

    そのため、判断力・責任を負う力がまだまだ乏しい子ども(未成年者)にはセックスしないように忠告し(『ダメ』という言葉を使うかもしれませんね)、ある年齢より下の子どもとのセックスは法律でも禁止しているのです。
    この年齢を「性交同意年齢」と言い、日本では「16歳」です。
    世界中の多くの国・地域で法律で「性交同意年齢」を決めています。
    主な理由は未成年者を性暴力から保護するためと、予期しない妊娠と性感染症感染というセックスのリスクを回避することです。
    国によって性交同意年齢は違いますが、だいたい義務教育を終えた年齢(15歳から18歳)くらいです。

    こういうことを義務教育の間に学校でちゃんと教えている国もあります。
    日本でも子どもたちにきちんと教えるようになるといいですね。
    子どもたち自身が大きな影響を受ける問題なのですから。

  • 高橋怜奈
    高橋怜奈

    産婦人科専門医、医学博士、性教育認定講師、YouTuber

  • セックスは快感を得たり、コミュニケーション手段だったり、赤ちゃんができたり素晴らしい事が沢山あります。
    でも一方で傷ついたり、人生が思い通りにいかなくなったりする事があります。
    きっと保護者の方や先生たちはそれを知っているから、皆さんが傷つかないように、時にはセックスをしないように伝える事もあるのでしょう。
    例えばセックスをすると、お腹の痛みや不妊の原因になる性感染症になるかもしれません。
    またコンドームやピルも100%妊娠を予防できるわけではありません。

    皆さんはセックスをする時、病気になったら、妊娠をしたら、病院に行くお金をどうするか、出産をするのか妊娠を諦めるのかなどの話を相手とできますか?
    実はこの辺の話は大人になってもしない人が多いです。
    本当はした方がいいんです。
    でも多くの大人はお金も保険証もあるしすぐに病院にかかれますので、自分の責任でセックスをするのです。
    まだ仕事をしていない、保護者の方と一緒でなければなかなか病院に行くことができない10代の方にとっては、セックスをした事でトラブルがあった時に大人に相談ができず、時間が経ってしまう事があります。

    そしてもう一つ。
    セックスをしたいという気持ちや人を好きだと思う気持ちが、10代のうちはよくわからないことがあります。
    例えば大人から誘われて『断りづらいという事は好きなのかも、セックスしたいという事なのかも』、と自分の気持ちを勘違いしてしまう事があります。
    大人になって全部わかるわけではないですが、責任を自分でとれるようになって、沢山の人と関わる中で、自分の気持ちを自分で整理できるようになる事もあるのです。

    責任をもってセックスを楽しめるまで他のコミュニケーションを試すのもいいし、もしお互いセックスしたいという時がきたら避妊や将来の事、何かあった時にどうするか話し合って、もしトラブルがあったらいつでも大人や病院を頼って下さいね。

  • 福田眞央
    福田眞央

    TENGAヘルスケア教育事業部/保健体育教員/思春期保健相談士

  • 私が小学生の高学年の時(携帯が普及し始めた、まだスマホがない時代)、携帯電話で読む電子書籍化された小説「携帯小説」というものが流行り始めました。

    高校生、大学生くらいの恋愛が描かれており、児童書を読んでいた小学生の私には、とっても刺激的でワクワクドキドキしました。
    セックスも性感染症もDVという言葉も、そこで初めて知りました。

    のめり込んだ私は、読むだけでは足りず、いろんな携帯小説から得た知識だけで、妄想を膨らませ、ついに自分でエッチな小説を書き始めました。
    見たことも、したこともないセックスを妄想だけで楽しんでいたのです。

    しかし、このエッチなお手製小説が、親にバレてしまいます。
    「子どもがセックスとか言うな!!」
    取り上げられ、なんやかんやと怒鳴られましたね。

    ここでやっとあなたの質問です。
    あなたのモヤモヤは、この時の私のことを思い起こさせました。
    理不尽なお叱りと没収に腹を立て、加えてエッチな小説がバレた恥ずかしさから、一気に親との壁を作りました。
    その後の私は、親に何を言われても無視!

    でも大人になった今、親の気持ちがわかります。
    まず、当時の私はセックスの適切な知識を持たずに、セックスについて語っていました。
    性感染症について知っていても、どう予防するのかは知らないし、適切な避妊方法ももちろん知りません。
    性的同意(性的な行為をする前にはお互いの許可をとること)についても知らないし、DVや束縛も愛の一種だと勘違いしていました。

    携帯小説にはそのような大事な知識の描写(言葉だけではない詳しい内容)はなかったのです。
    そんな間違ったことばかりのことを、妄想だけに留まらず、言語化してしまっていたのですから、親もわが子の想定外のことに心配になり、焦ってしまったのかもしれません。

    ただ、大人になった今、当時の親に私から言えるのは「怒るだけじゃなくて、なんでダメなのかきちんと説明してくれたら良かったのに」ということと「セックスは子どもがダメというわけではなく、知識がないなら大人もダメ」ということです。
    上記の水野先生や怜奈先生のように、適切な知識を教えてくれていたら、壁は作らなかっただろうなと思います。

    まぁ私の場合「この小説のここがどう間違ってる」なんて、親にじっくり読まれて解説されたら、それこそ恥ずかしくて、絶壁が出来上がりそうですが(笑)

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