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木村涼子
大阪大学教員
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実は私も子どもの頃、おなじような不満をいだいていました。あなたの気持ちがよくわかります。私にも兄がいるのですが、父も母も家事のお手伝いは女の子がするものだと思っていました。私は「なんでお兄ちゃんはお手伝いしなくていいの?」と親によく文句を言っていたものです。また、うちの父もまったく家事をしない人でした。母は、内職やパート労働など何かしら働きながらも、家事育児を一手に引き受けていました。両親はふたりとも一日中働いていましたが、家計管理も種々の決定権も父の手にありました。
こうした日常をみていて、なぜ性別で役割が固定されているのだろう、なぜ男性の役割の方が女性の役割よりも価値があるように扱われるのだろうと、子どもの頃から疑問に思ってきました。
このような疑問や不満は、あなたや私一人のものではなく、昔からたくさんの女性が抱いてきたものです。女性の疑問や不満から、男女の平等をもとめる「フェミニズム」という思想や運動が生まれました。20世紀後半以降、「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業は、近代社会において人為的に作り出された社会的・文化的な男女の分割線(ジェンダー)であり、それこそが性差別の基盤となっていると批判され、少しずつ社会は変化してきました。
21世紀の現在では、家庭外の仕事に就労する女性や家事育児に携わる男性はかつてよりもずいぶん増えています。「夫は外で働く、妻は家庭を守るべきである」という考え方に賛成する人の割合は、30年前には6割にのぼりましたが、いまや賛成と反対の比率は逆転しています。これは日本国内だけでなく、世界の流れです。
お父さんのような考え方は、いまや「時代遅れ」になりつつあります。未来をつくっていくのは、あなたのような若い世代であり、あなたが感じている「うんざり」こそが、社会の前向きな変化のエネルギーになっていくものだと思います。
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阿部 真紀
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あなたは、人は本来皆が平等であり、男性であるから、女性であるからという性別によって役割を押しつけられなくていいこと、つまりとても大切なことに気づくことができている人です。まずは、自分の感覚を信じて、守ってほしいと思います。
あなたは、家族に対してでも、「私はこう思う」という自分の考えを伝えることができます。ただ、自分の考えを伝えても、相手の考えを変えるのは難しいこともあると知っておいてください。父親や母親だからといって、自分の考えをあなたに押し付けることができないのと同じように、あなたが父親や母親の考え方を変えることは難しいかもしれません。
父親や家族は、これまで生きてくる中で誰かから「男はこうだ、女はこうだ」という偏った考え方を教え込まれてきたのかもしれません。
あなたは、そうではないということに気づくことができています。その自分の素敵な感覚を大切にして、生きていってほしいと思います。
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福田眞央
TENGAヘルスケア教育事業部/保健体育教員/思春期保健相談士
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お父さんは、今まで性別で役割を区別して生きてきたので、それが正しいと思っているようですね。しかし、時代は変わり、現代では男女平等が主流です!
「時代は変わった」
これを昔の時代を生きていた人に理解してもらうのは難しいですが、家族全員の努力で良い変化をもたらしましょう。お母さんが何も言わない理由は、彼女自身が現状の問題点をうまく言語化できないからかもしれません。現代では、このような問題を取り扱う書籍が増えています。特に、私はアルテイシアさんの本を読んで、言葉にできないモヤモヤを形にするのに役立ちました。一緒に読み、家族の問題を話すきっかけにするのはどうでしょう?
お兄さんは、現代に生まれてきたのに、このままでは「時代遅れ」になるかもしれません!手遅れになる前に、お兄さんにも男女平等について理解を促すことが必要でしょう。ジェンダーを知っていることでお兄さん自身も自分の生きづらさを客観視したり、豊かな人生を送ることにつながります。
お父さんには、古い価値観を持つリスクを理解してもらう必要があります。伝える際は、非難の言葉ではなく、理解を求める姿勢で接することが大切です。それでもお父さんは差別的な行動や言葉を選んでしまうこともあるでしょう。その時に重要なのは、その後に反省しているかです。反省できるかどうかは、生きてきた時代は関係なく、人間性の問題だと思います。
反省できない、そもそもお父さんの努力が感じられない、という人間性に問題があることで、より深刻な問題(例:虐待やDV)がある場合は、相談窓口に連絡するなど適切な支援を求めましょう。家族とはいえ、自分自身の安全と心の健康を守ることが最優先です。
家族関係は親と子だとしても上下関係ではなく、互いを尊重し合える対等な関係を目指すのが良いなと私は思います。あなたが家族全員で新しい時代の価値観を共有したいと望むのであれば、家族全員が協力して男女平等の家庭・社会を作り上げていきましょう!
ただし、子のあなたが親の価値観を変えることはかなり難しいことです。上手くいかなくても自分を責める必要はないことも覚えておいてくださいね。
2件のコメントがあります
めっちゃわかるー!!
2024.10.12 18:49まだ男女に対する偏見が残っていますよね。男女平等の社会になり、誰もが暮らしやすい世の中になっていってほしいです。
2024.01.14 22:51