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高橋幸子産婦人科医/埼玉医科大学 地域医学推進センター・産婦人科
- どんなワクチンにも副反応があります。慎重に検討するのはとても素晴らしい事ですね。
子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)は子宮頸がんだけでなく、中咽頭がん、陰茎がん、肛門がんなど少なくとも6つのがんと尖圭コンジローマという性感染症を防ぐワクチンです。世界の多くの国では男性にも接種が推奨されていて、日本でも2020年12月から有料ではありますが、男性にも打てるようになりました。
2013年4月に小6~高1女子が無料で接種できる定期接種となりました。ですが、定期接種になってすぐに、痛み・しびれなどのワクチンの副反応(免疫がつく以外のワクチンによる反応。質問者さんが言う「副作用」のこと)が多くの少女に起きたとされ、保健センターからHPVワクチンのお知らせが届かなくなりました(厚生労働省からの「積極的接種勧奨の差し止め」)。
その影響により、多くの市町村では対象者にワクチンのお知らせが届かなくなっていました。しかし、その後「名古屋スタディ」という調査で副反応と呼ばれた症状はワクチンを打っていない少女にも起きていることがわかりました。つまり、ワクチンとの因果関係は証明されませんでした。世界的に安全だと認められているワクチンです。
さらに、2020年、スウェーデンではワクチンの効果で子宮頸がんが減ったことが報告されており、効果も証明されています。
2021年10月1日、厚生労働省の副反応検討部会で「再開を妨げる要素はない」とされ、2022年4月より再び小6~高校1年生の女子に、HPVワクチンのお知らせが届けられるようになっています。また1997〜2007年度生まれの女性には、キャッチアップ接種のチャンスがきています。2025年3月まで、無料で打つ事ができますので、おそくとも2024年の9月までに1回目を打つことをご検討ください。
住民票のある地域の保健センターにお尋ねください。
HPVワクチンは3回接種する必要があります。(9価であれば14歳までは2回で完了となります)
全部で半年ほどかかりますが、初めてセックスをする前に3回の接種を終わらせるのが理想です。そして、性経験がある方でも打つことが推奨されています。
ワクチンの副反応によって万が一、健康上のトラブルが起こった場合のために、予防接種健康被害救済制度が整えられています。(一部自治体では男性にも無料で接種しています)
↓こちらの動画では、17歳で子宮頸がんにかかった女の子のエピソードを交えて、子宮頸がんとHPVワクチンに関して詳しく説明しています。ぜひご覧ください。
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島袋朋乃産婦人科医
- ワクチン接種が原因で起こる健康上の問題のことを、「副作用」ではなく、「副反応」と言います。
子宮頸がんワクチンを接種すると、インフルエンザワクチンなどほかの予防接種と同様に、接種後の発熱や接種した部位の腫れ、頭痛などの副反応が出てくることがあります。また、子宮頸がんワクチンは筋肉注射なので、接種した腕が筋肉痛になることもあります。これらの症状は数日から1週間程度で改善します。また、疲れているときや、注射が苦手で極度に緊張した状態で接種を受けると、気分が悪くなったり、失神してしまうことがあります。
これを「迷走神経反射」といいますが、こちらも短時間で回復します。注射が苦手な方は、あらかじめ横になってリラックスした状態で接種を受けることもできるので、心配な方は接種を受ける医療機関で相談しましょう。子宮頸がんワクチンに関して、かつて「接種後の後遺症」として脱力、歩行困難などが起こり寝たきりになってしまった女の子たちの映像がしきりに報道されたことがあります。
しかし、その後科学的な検証の結果、「ワクチンのせいでそのような症状が出たわけではない」との結論が日本国内で出されました。海外でも、日本での報道を受けて同様の検証が複数行われましたが、いずれも同じ結論となりました。
子宮頸がんワクチンはすでに世界中で何億回と接種され、その有効性と安全性は確立されていると言えます。もしも子宮頸がんワクチンを接種した後に心配な症状が出てきた場合は、一人で悩まずに接種した医療機関へ相談しましょう。ワクチンが原因ではなくても、何かほかの病気が隠れていることがあるかもしれません。
医療機関のほかにも、都道府県や市町村、厚生労働省でも相談窓口を設けています。また、ワクチン接種の前に、本人がワクチン接種のメリットや起こりうる副反応について、十分に納得することがとても大切です。厚生労働省やみんパピからの情報などを参考に、小児科や産婦人科の信頼できる医師と、自分のからだの守り方について一緒に考えていきましょう。
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まなNPOピルコンフェロー/性教育について活動中の大学生
- 一時期、子宮頸がん予防ワクチンへの副反応に対するマイナスイメージにつながる報道がニュースでよく見られたので、心配ですよね。
私もきちんと勉強するまでは、よくわからず不安でした。しかし、色々調べたり勉強会に参加してみたりして、今ではワクチンの接種にとても前向きになりました。副反応が出る人より子宮頸がんにかかり亡くなってしまう人の方が多いことから、接種しないことによるリスクの方が高いと知ったことが大きいです。
ただ副反応が100%何も起こらないということは断言できないので、ご自身でも調べてみて、自分の体のためにどうするか、決めてみてください!ワクチンによりHPVへの感染率は大幅に下がりますが、100%子宮頸がんを防げるわけではありません。そのため、ワクチン接種をした人も、定期的な子宮頸がん検診がとても大切になります。そちらも覚えておいてもらえたらなと思います。
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モヤパン性のモヤモヤから生まれた妖精
- HPVとは、ヒトパピローマウイルス(Human Papilloma Virus)の略称よ。どこにでもあるありふれたウイルスなんだけど、100種類以上のタイプがあって、皮膚や粘膜に感染すると細胞が異常な形に変化するという特徴があるわ。
HPVはセックスによって感染することがわかっていて、性器性交だけでなくオーラルセックス(口腔性交)などでも感染するの。性経験のある女性の50%~80%が、生涯に一度は感染すると言われていて、男性・女性問わず、多くのひとが感染するものよ。
ほとんどの場合は自分の免疫機能でウイルスを撃退できると言われているわ。でも、自分の免疫機能だけではやっつけられず長期間感染が続くと、感染するHPVの型にもよるけど、性器にカリフラワーみたいなイボができる尖圭コンジローマ(発症まで2~3ヵ月)や、女性の子宮頚部にできる「子宮頸がん」(発症まで5~10年)などの病気につながるの。
特に子宮頸がんは20代から30代の女性の患者が増えていて、日本では毎年1万人の女性が子宮頸がんにかかり、そのうち3,000人が亡くなっているの。
日本で認可されている2価・4価のHPVワクチンは、子宮頸がんの原因となる有害なHPVの感染をおよそ70%、9価は90%以上防いでくれて、それによって子宮頸がんだけでなく、中咽頭がんや陰茎がんなど全部で6種類のがんの予防に効果があるとわかっているわ。
HPVワクチンは3回の注射で接種するのだけれど、通常は約5万円ほど費用がかかるわ。(9価は10万円。2023年早期に定期接種の対象となることが議論されています)それが小学校6年生〜高校1年生の女子は無料で受けられるから、あなたが子宮頸がんやHPVワクチンについて理解した上で受けたいと思ったら、この期間のうちに受けるのがおすすめよ。
もっと知りたい!HPVワクチンについて
“9価ワクチン”って何?
これまで日本で小学校6年生から高校1年生までの女の子と、1997年度~2005年度生まれの女性(キャッチアップ接種は2025年3月まで)が助成の対象になっていた2価・4価ワクチンより、多くの型のHPVを予防することができるワクチンのことよ。
9価ワクチンは、子宮頸がんの原因となるほとんどの型のHPVを予防できるから、アメリカやオーストラリアでは、すでに男女への定期接種がされていて、この動きは世界に広がっているわ。
日本では、2023年4月から9価ワクチンの定期接種(助成の対象)になりました。
そして、9価のワクチンなら、15歳未満で1回目を接種すれば、2回で接種を完了することができることになりました。また、定期接種対象年齢の人は有償になりますが接種することができます。
希望の場合は対応している病院を検索して、価格も含めて確認してね。
すでにセックス経験がある人は、HPVワクチンを打つ意味はない?
HPVワクチンはすでに感染しているHPVを排除することはできないから、初めてセックスする前の接種が最も有効よ。
ただ、セックスの経験があったとしても、ワクチンに含まれる型のHPVに感染していなければ、接種の意味はあると言えるわ。
HPVワクチンを打った人でも子宮頸がんの検診は受けた方がいい?
HPVワクチンで子宮頸がんになる原因を減らすことと一緒に、子宮頸がん検診を受けることもとても大切よ。
HPVワクチンは子宮頸がんを効果的に減らすことが分かっているけど、100%がんを予防できるわけではないの。
そして、子宮頸がんは最初の時期はほとんど症状がなく、気づきにくいものなの。
だから、セックスの経験がある20歳以上の女性は、2年に1回、子宮頸がん検診を受けることが勧められているわ。検診を受けて早い段階で発見することで、がんが進行する前に対処・治療ができるよ。
自治体や職場の補助で2000円以下で子宮頸がん検診を受けられるようになっているから、ぜひ調べてみてね。
男性も接種対象に!
HPVは男性もかかる中咽頭がん、肛門がん、陰茎がんなどの原因となるにも関わらず、HPVワクチンはこれまで女子のみの接種が承認されてきました。
ところが、2020年12月に厚生労働省はHPVワクチン接種の適用範囲を男性にも拡大する決定をしました。
今のところ、男性は任意での自費接種(3回接種で5万円前後)とるものの、今後は女子と同様に公費で受けられるように定期接種化が検討される予定です。(一部自治体では男性にも無料で接種しています)
4件のコメントがあります
子宮頸がんワクチンの副作用が怖い、という悩みに、わかりやすく答えてくださってて学びになりました。
2021.01.13 07:37子宮頸がんワクチンはデリケートな話になってしまっているのが勿体無いですよね。
予防するワクチンであることがもっと広まってほしいです。
子宮頸がんワクチンについて詳しく分かりやすく書かれているので、すぐに読むことが出来ました。
2021.01.12 19:39大切なことだから多くの人に読んで欲しい!!
親や周りの知り合いを通して聞く、ワクチンの副反応のイメージがとても悪かったため、なかなか接種に踏み切れていませんでした。
2021.01.12 18:34しかし、6つものがんを防ぐ効果があること、ワクチンと副反応の因果関係がないことなどを知り、自分の身体のために、将来のためにもっと調べて、接種したいと思えるようになりました。
きっかけ作りありがとうございます✨
とてもわかりやすいです。9価ワクチンについて気になってました。
2021.01.05 20:36