性感染症を知ろう！症状や予防方法を紹介【医師監修】

まず最初の性感染症は「梅毒（ばいどく）」よ。梅毒はとっても歴史のある性感染症で、あの1492年にアメリカ大陸を発見したコロンブス一行がヨーロッパに持ち込んだといわれているわ。
その後、ヨーロッパで大流行して、フランスの皇帝・ナポレオンや、ドイツの作曲家・ベートーベンもこの病気にかかっていたともいわれているの。
日本には1500年代に中国から入ってきて、またたく間に全国に広がったと言われているわ。

しばらくは有効な治療法がなくって「不治の病」なんて言われていたわ。
江戸時代に栄えた遊郭（ゆうかく）・吉原では、働いていた遊女たちの多くが梅毒にかかって亡くなったと言われているわ。彼女たちの平均寿命はわずか22歳だったそうよ。

そのころはね。でも、1940年代にペニシリンという抗生物質が開発されたことで、梅毒はようやく治せる病気になったの。
その後は発症率も劇的に減少して「過去の病気」なんて言われるようになったわ。

ヒカルくん、ナメちゃだめよ！梅毒は近年、再ブレイクしてるんだから。
2003年には国内の感染者数が509人まで減った梅毒だけれど、その後は一転して増えつづけて、2018年には7,000人を突破するほど感染が再拡大しちゃってるの。
梅毒のことを「一発屋」だなんて言って油断しちゃうと、痛い目を見るってことね。

梅毒は感染しても症状が出ないこともあって、自分が感染に気づかないことがあるの。
それに、発症したとしても自然と症状がおさまったり、忘れたころにまた発症したりを繰り返すケースもあるのよ。
症状としては、「できもの」や「しこり」、「発疹（ほっしん）」といった症状が表れることが多いんだけど、治療をしないでも症状が自然と消えてしまうから、「治った」と思い込んでしまうのね。でも、きちんと治療をしないでいると、症状はおさまっても細菌自体は体内に残っているから、気づかないうちに心臓や血管など体の内部で症状が進行して深刻な症状につながるわ。
気づかれずに忍び込む、まるで忍者のようじゃない？

ちなみに梅毒の発疹は赤やピンクの色をしていて、バラの花みたいに見えるからバラ疹（しん）って言われるんだけど、ヤマモモ（漢名：楊梅ようばい）にも似ていることから「梅毒」って名付けられたのよ。

保健所で検査してもらえるわ。無料・匿名で検査してくれるから、安心よ。
性器や口の中などにしこりができたり、手のひらや足の裏にブツブツができたりしたら、痛みやかゆみがなくっても梅毒の可能性があるから、早めに医療機関を受診してね。

性器クラミジア感染症は、日本で最も多い性感染症だよ。特に10代や20代の若い人たちの間に感染が広がってきているから、ふたりも注意してね！
男女とも感染しても無症状の場合が多いんだけど、特に女の体を持つ人は症状があったとしても、おりものの量が少し増えるだけだったりして感染に気づきにくいの。

コマチちゃん、無症状だからこそ怖いのよ。
自覚がないままパートナーへ病気をうつしてしまう場合もあるし、治療をせずに放置していると、女の体を持つ人の場合は骨盤内炎や卵管炎などを起こして重症化する可能性もあるの。将来、子宮外妊娠につながったり、不妊症の原因となることもあるわ。

そうね。でも最近はオーラルセックスをする人が増えているから、クラミジアに感染した性器からのどにクラミジアが感染するというケースもあるの。
のどに感染すると、のどが腫れたり、痛みや発熱などの症状が出るわ。

さすがコマチちゃん、その通りよ！オーラルセックスの時には、「デンタル・ダム」という薄いシートや、食品用の「ラップ」を使うことで感染可能性を下げられるわ。
そして、少しでも自覚症状を感じたら医療機関を受診することが大切よ！

あと、オーラルセックスは「しなきゃいけないもの」ではないってことも忘れないでね。
不安を感じる時はもちろん、相手から求められたとしても、したくない時は無理にする必要はないわ！

淋菌（りんきん）は男女ともに感染するけれど、女の体を持つ人は感染しても無症状の場合が多いのよ。男の体を持つ人の場合はすぐに分かりやすい症状が出るわ。

尿道にかゆみや熱っぽさがあったり、尿道口から黄色い膿（うみ）がでたりするの。
おしっこをする時に激しい痛みがあったり、ペニスが腫れることもあるわ。

コマチちゃん、ひとごとじゃないわよ。
たしかに女の体を持つ人は無症状の場合が多いから感染に気づきにくいんだけど、そのまま放置していると子宮内膜炎や卵管炎を引き起こして、将来の子宮外妊娠や不妊症の原因になることがあるわ。
あと、女の体を持つ人の場合は淋菌に感染したまま出産すると、生まれてくる子どもにも淋菌が感染し、場合によっては赤ちゃんの命に関わる事態になることもあるのよ。

そう！コンドームでの予防が有効よ。
クラミジアと同じように、のどへの感染も増えているから、オーラルセックスの時も、アナルセックスの時も、必ずコンドームを付けたり、感染が心配な時は検査をしてね！
コンドームは自分を性感染症から守るだけでなく、大切なパートナーを守ることやライフプランの実現にもつながるわ。

性器ヘルペス感染症は、モヤパンも昔かかったたことがあってね。もうとにかく、痛くて痛くて震えてたよ。

してたわよ！
確かに性器ヘルペス感染症に対してコンドームは有効な予防方法だけど、コンドームで覆（おお）えるのはペニスだけでしょ？ヘルペス感染症は感染力が強くて、粘膜以外の胸やおしりなど、体のいろいろなところに感染することができるの。だからコンドームで完全に防げるというわけではないのよ。

無症状のことも多くて感染に気がつきにくい病気ではあるけど、性器に小さい水ぶくれやただれが出たときはヘルペスの疑いがあるから、性行為をしないことが一番よ。
口唇ヘルペスのある人も、症状が出ている時はオーラルセックスは避けてね。

頭部に吸盤のついたコバンザメという魚がいて、サメやクジラなどの大型生物に吸い付いて、エサのおこぼれを食べたりして生きているの。それと同じで、性器ヘルペス感染症も一度感染すると人間の体の中にすみつくのよ。

梅毒などは抗菌薬を飲めばウイルスが死滅するんだけど、性器ヘルペス感染症の場合、水ぶくれやただれといった症状は薬で治せても、ウイルスを死滅させることはできないの。いつまでも神経節にウイルスが潜伏（せんぷく）して、ストレスが溜まっている時や疲れてる時などに再発するわ。
初めて感染したときは、症状が強く出るけれど、再発のときは初めての時に比べて症状が軽いし、そもそもヘルペスは命を脅かすほど重症にはならないから過度な心配は無用よ。
「再発かも」と思ったら、なるべく早く治療をスタートするのが効果的よ。

そうね。ただ、無症状でウイルスを排出している場合もあるし、なかなか完全な予防は難しいかもしれないわ。
もし自分やパートナーがヘルペスと診断されたとしても、ヘルペスのことを正しく知って、感染を広げないように上手に付き合っていくことが大切よ。

尖圭コンジローマを一言で表すと「イボ」よ。
ペニスや女性器、肛門などにイボができるんだけど、ほとんどの場合、痛みやかゆみを感じないのが特徴よ。

初めは2〜3mmくらいの小さなイボが、だんだん大きくなったり増えたりするわ。この特徴的なイボの中にウイルスがたくさんいるのよ。

最近は塗り薬で治療する方法か、イボを切除したりして除去する方法があるわ。
ただ、イボを取り除いたとしても、油断は禁物！30％くらいの人が再発すると言われているから、治療後数ヵ月は定期的に病院で診察して経過観察する必要があるわ。

コマチちゃん、いいところに気づいたわね！
尖圭コンジローマの原因になるのはヒトパピローマウイルス（HPV）っていうウイルスなんだけど、このHPVの感染リスクを下げることができるワクチン（HPVワクチン）があるのよ。
HPVは、子宮頸（けい）がんを始めとしたいくつかのがんの原因にもなるウイルスだから、ワクチンを打つことで尖圭コンジローマだけでなくがんの予防にもなるのよ。
小6〜高1の女子なら無料で受けられるから、興味があったら詳しく調べてみてね。

単細胞の寄生虫のことよ。
今まで紹介してきた性感染症はウイルスとか細菌によるものだったけど、このトリコモナス症の病原体は、原虫と言われる微生物なの。
特徴的なのは、セックス以外にも、下着、タオル、便器、浴槽などからも感染すると言われていることね。

清潔にしておけばいいの。不衛生な下着やタオルを使い回したりしなければ、今の日本の衛生環境では感染することはほとんどないから安心して。
やっぱり気をつけるべきは、他の性感染症と同様に、セックスの時！きちんとコンドームをして感染予防することが大切よ。

トリコモナス症は特に女の体を持つ人に症状が出やすいわ。おりものが泡立っている時や、嫌な臭いがする時は要注意だっていうことを覚えておいて。

カンジダはカビの一種よ。

カビキ◯ーは浴槽などのカビに吹きかけるもので「直接皮膚にかからないように、ゴム手袋を着用しましょう」って書かれてるくらい強力な薬品よ。患部に吹きかけていいわけがないでしょ？

性器カンジダ症は確かにセックスで感染することがあるけど、もともとヒトの体内に存在する菌でもあるの。だから健康な人の体内にもこのカビがいる可能性はあるのよ。もしかしたら、コマチちゃんの身体にもいるかもしれないわ。

カンジダは菌を持っていたら必ず発症するというわけじゃないわ。
疲労がたまって抵抗力が落ちた時なんかに症状が出ると言われているの。

何年も潜伏していることもあるから、もともと自分の体内にあったカンジダが発症したのか、誰かにうつされたカンジダが発症したのかも、なかなか特定できない性感染症なの。

そういうことね。だから、パートナーのためにもしっかりコンドームをつけることが大切よ。

もし気になる症状が出たら、女の体を持つ人は産婦人科・婦人科、男の体を持つ人は泌尿器科を受診してね。
最近は女性用のカンジダの再発治療薬が薬局でも手に入るようになっているけど、買うことができるのは医師から腟カンジダの診断・治療を受けたことのある人に限られるから気をつけてね。

HIVはヒト免疫不全ウイルスのことで、体内にHIVがいる状態を、HIV感染と言うの。
HIVはヒトの免疫細胞に感染して増殖していくウイルスよ。

HIV感染を治療せずにいるとやがて体の免疫力が低下して、普段だったら病気を起こさないような弱いカビや細菌、ウイルスなどの病原体による症状を抑えられずに、さまざまな病気を発症するの。特に代表的な23の疾患を発症すると、エイズと呼ばれるわ。
つまり、HIVはエイズの原因であるウイルスの名前で、それによって引き起こされる病気の総称をエイズと言うわけ。

たしかに昔はそう言われていたんだけど、今では医学の飛躍的進歩によってエイズの発症を抑えられる薬ができたの。
だから今は、たとえHIVに感染しても、早めに治療すればエイズの発症を抑えられるのよ。

それに、治療によりウイルス量を現在の検出方法では見つけられないほどまで抑えることができるようになったから、HIVに感染していても健康な状態で生活を続けることができるし、他の人へ感染させないことができるようになったよ。

昔は治療法さえ確立していなかったから恐れられたけど、今はきちんと治療法が出てきたから、以前言われていたような「かかったら終わり」なんて病気ではないわ。

そうかもしれないわね。
ふたりとも、これはよく覚えといて。大切なのは、「病気を知って、正しくおそれる」こと。
偏見や不確実な情報を元に、病気を恐れたり感染している人を差別したりすることは、決して許されない行為だけど、正しい情報を元に予防したり、心配なことがあれば検査や相談にいくことはとても大切なのよ。