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野坂祐子
大阪大学大学院人間科学研究科 臨床心理士/公認心理師
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自分のからだに触れられるのが、嫌な時もあれば、そうでない時もある。相手によるのか、タイミングによるのか、はたまた触れ方によるのか…?ボディタッチって「いつでもOK、何でもOK」ってわけじゃないから、不思議ですよね。
実は、ボディタッチに対する感覚は、そんなふうにいつも変わりうるものなんです。
というのも、私たちのからだは境界線(バウンダリー)で守られていて、自分が望んでいない時は不快になる一方、自分も求めている時は、他者との触れ合いが心地よく感じられるものだから。相手が誰であっても、「急に」抱きつかれたなら、自分の境界線に入り込まれた感じがして、びっくりします。髪の毛や顔、ましてやプライベートパーツ(性的な部位)に触れられたりすると、知っている相手でも「なれなれしいな」と感じたり、「やめてよ」って思ったりします。こわくて、深く傷つく体験になることもあります。
相手に悪気があるかどうかは、関係ありません。境界線は、あなたのものだからです。
そして、あなたは自信をもって、自分の境界線、つまりからだの感覚を大事にしていいんです。もし、また友だちがボディタッチをしてきたら、「わたし、触られるのは苦手だからやめて」って伝えてみるのはどうでしょう? 友だちを否定するのではなく、行動を拒否するのです。だから、罪悪感をいだく必要はありません。
人によって境界線の感覚は違うので、話せる仲間と「どういうタッチはOK? NG?」とおしゃべりするのもいいかもね。気分や体調によって、「そばにいて」と感じることもあれば、「ごめん、ちょっと一人にさせて」ってときもあるでしょ? だからって、あなたが冷たい人になったわけじゃなくて、今は静かに休息したいってだけの話。
こんなふうに、境界線って、そのつど相手に聞いてみないとわからないんだ。
友だちであれ、家族であれ、境界線を守るには、コミュニケーションが大事なんだね。
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徳永桂子
思春期保健相談士
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ボディタッチをどこまで許せるか、どこまで自分が安心・大丈夫と感じられるかってラインは、それをしてくる相手との関係性によって変わってくる。さらに受ける人の感覚によっても変わってくる。だから人と違っていいんだよ。
人には自分の体を大切にする・守る権利がある。あなたが嫌だと感じるのは自分の体を大切だと思えているから。自分の体の状態や置かれている環境によって体を大切にする行動が変わってくる。体調が悪いときは自分を守るために、より人とのボディタッチを避けようとするから、変化して当たり前。あなたが悪いということではないよ。
「性的同意」という言葉、聞いたことある?これ、性行為の話だけじゃないんだよね。誰にとっても、自分の体は自分だけの大切なもの。この体に誰がどのように触れるか、決めて良いのは自分だけ。だから体に触れる行動を起こす側が、その都度、同意を取る必要がある。こういうことは「性的自己決定権」(性に関することがらについて、自分のことは自分で決める権利)の勉強をするときに、わかりやすく説明をしてもらえると日常生活に活かすことができる。性教育が充分実施されていない状況になっている事、本当に申し訳なく思ってるよ。
人と同じことが重視される日本社会では、Noって言いづらいと感じる人も多い。そういう時は、私を主語にするI(アイ)メッセージを使うと伝えやすいよ。「(私は)髪の毛を触られるの好きじゃないんだ。」「(私は)急に抱き着かれてビックリしたよ。先に声をかけてくれると嬉しい。」
友達に悪気がないってことだけど、自分で意識化できていないとこれからも繰り返して、嫌だと感じる人が出てくるってことだよね。周りの人に対しても「今急に抱きつかれて、(私にはあなたが)嫌そうに見えたけど大丈夫?」などと使っていくことで、その友達も、自分の当たり前と周りの感覚が違うことに気づいていける。これってすごく友達のためになると思うよ。
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りな
NPOピルコンフェロー
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家族とはOKでも友達とは嫌なこと、ありますよね。あなたが悩んでいるパーソナルスペースに関しても、相手や場合によってOK/NGが変わったりします。
このようにOK/NGの「境界線」(「バウンダリー」とも呼ぶ)を持つのは大切なことで、自分のニーズを把握するという立派なことなんです。バウンダリーは他人を遠ざけるものではありません。お互いのバウンダリーを尊重することによって信頼が生まれ、充実した人間関係を築くことができるんです。
みんな色々な境界線を持っているので、他の人の境界線を想定できない時もあります。そこで言葉を使って表すのが必要になってきます。相手が納得しなくても、自分のバウンダリーは正当なもので、尊重される権利があります。
あなたがゾッとしたのは、バウンダリーが超えられたサインだと思います。嫌な気持ちを覚えたのは悪いことではありません。友達と対等で健康な関係を保つためには、バウンダリーを明らかにする必要があるというだけです。
あなたが考えた通り「やめて」だけだと相手が傷つくかもしれないので、まずは友達として感謝していることを伝えよう。そうしたら、優しくはっきりと自分の境界線を伝えよう。どこまでならOKかを伝えるのも良いかもしれません。
例えば、「〇〇、いつも仲良くしてくれて嬉しいよ。ところで〇〇はいつもハグしてくれるけど、実は自分はボディータッチが苦手なんだ。代わりにハイタッチだけか、手を振るのがいいな。」などはどうでしょうか。
最初は慣れる時間が必要かもしれないけれど、友達は理解してくれるはずです。なかなか尊重してくれない場合は、再度伝えてみよう。それでもだめだったら、仲良くできないと伝える必要があるかもしれません。
人間関係を築く上で自分のニーズと向き合うことは、生涯の取り組みです。友達への優しさと愛情と同時に、自己尊重も大切にしていこう。
3件のコメントがあります
ほんとに分かる。1番仲のいい友達がボディタッチが激しめの子。仲良いからこそあまり強く言えなくてモヤモヤして家で泣いちゃうこともある。胸を触ってきたりほっぺにキスしてきたり、相手の子は同性だからOKだと思ってるのかもしれないけど、こちらからしたら友達だとしても、同性でも、所詮『他人』いつもいつも気持ちが悪くて仕方ありません。私も相手もバイ・セクシャルというのもあって、可愛い大好きって口にキスしようとしてきたら、「恋愛対象として見てるのかな?」って思ったら余計に鳥肌が立ってしまいます。
2024.08.22 20:26わかる…同性の友達で気軽にハグしたり腕組んだりできる子いるけど、私はそのときどういう反応すればいいか分かんないし、急に来るとウワァってなるんだよね…。
2023.12.10 13:19ですよね…私も親にも触られるのが嫌で、ちょんでも無理なんです…
2024.04.04 08:23同感ですね…
2024.08.09 14:34私の友達(同性)も腕とか背中をよく触ってくるからゾワッとなったり鬱陶しくなる時あるなぁ…
すごく勉強になりました。
2023.12.09 12:08