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福田和子
#なんでないのプロジェクト代表
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「世界」には多様な国があり、「性」に対する考え方は国・地域・文化によって異なります。
「世界は進んでいる」「〇〇は遅れている」と一概に言うことは難しいですが、国際的な基準との比較は可能です。現在、UNESCOやWHO、UNFPAなどの国連機関を中心に「包括的性教育」が推進されています。
これは人権やジェンダー平等を基盤に、からだだけでなく心や人間関係、セクシュアリティに関する幅広い内容を年齢や発達段階に応じて学ぶものです。
「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」もこの国際的基準を示しています。各国ではこのガイダンスに基づく実践が進められています。
例えば私が以前住んでいたスウェーデンでは、性教育が義務教育の一環となっており、性的同意や関係性の築き方、ポルノとの向き合い方まで学びます。また、ユースクリニックで専門家に無料で相談できる環境も整っています。
ルワンダのように、包括的性教育を進めているとしつつ、文化的タブーである中絶や同性愛についてはほとんど扱わない国もあります。日本ではどうでしょう?
近年、性の多様性について学ぶ機会は増え、性暴力防止を目的とした「生命の安全教育」も始まりましたが、2000年代の政治的バッシングや学習指導要領の「はどめ規定」により、依然として性教育がしやすい環境は整っていません。そんな中2023年、国連人権理事会「普遍的・定期的レビュー」では、
「国際基準に沿った包括的性教育の実施」が勧告されましたが、日本政府は「日本では生徒の発達段階に応じて様々な視点からの性教育がすでに学習指導要領に沿って提供されている。一般的用語としての包括的性教育およびUNESCOガイドラインで提唱されている包括的性教育について、日本政府はいずれも受け入れない」と回答しています。この回答や現状について、皆さんはどう思いますか?ぜひ考えてみてくださいね。
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リック
TENGA海外社員(アジア)
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私は1984 年生まれの台湾人で、台湾で教育を受けて育ちました。
当時の台湾の学校では、小学校6年生の保健教育教科書に性教育の授業が導入されていました。
小学校での性教育は、生殖器や性行動の詳細についての踏み込んだ議論は避けられており、私が自分の体、性別の概念、思春期の生理学的変化についてより深く理解できるようになったのは中学校で性教育を受けてからで、男子と女子の生殖器の違いやジェンダー関連の問題について理解し始めました。最も印象に残っているのは、教師が生徒たちにセックスを試みないよう警告するために中絶ビデオを見せたときのことです。
コンドームの使用は授業で教えられますが、デモンストレーションに過ぎず、実際の実践には欠けていたように思います。
振り返ってみると、当時の学校が包括的な性的健康教育を提供するのではなく、性行為の危険性を強調することが多かったのは残念なことです。ですが、近年の台湾で行われている性教育は自分が性教育をうけていた時と変化があります。
重要な変化の一つは、2004年にジェンダー平等教育法という法律ができたことにより、ジェンダー平等と性自認に関する内容が増えたことです。
これによって、台湾全体で異なる性別の権利を理解し尊重する社会を奨励しており、社会においても台湾のジェンダー平等状況はアジアでもトップで、2019年には同性婚が認められています。
また学校でも包括的な性教育に向けて、性別の多様性、性的指向、性自認の重要性を取り扱い、生徒はより良く理解する傾向があります。
他にも、人々が性健康の問題についてよりオープンに話すことが容易になり、生理やマスターベーションに対する社会的なタブーを減少させることにも貢献しています。
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モニカ
TENGA海外社員(アメリカ)
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モニカです!1996年に台湾で生まれ、小学校から高校までの12年間は中国で、アメリカ系インターナショナルスクールに通っていました。教育コースがアメリカの私立に似ていて、アメリカンスタイルの教育を受けてきました。
小学校のときは、5年生から男女で分けられて、思春期のからだのつくり(胸など)、生理の仕組み、生理用品の使い方などの簡単な説明がありました。
中学校のときは、ヘルス(健康)に関連する授業がありました。
そのクラスでは、体、性、思春期の心と感情など、Wellness(ウェルネス:より良く生きるライフスタイルのあり方、健康を超えた概念)を教わりました。
その中には、思春期、人と人の関係、男女関係、コミュニケーション、お酒、薬物、暴力、マスターベーションなど、色々なことを学びました。高校のときは、性教育が体育の授業で行われました。性感染症の予防や治療法など詳しく教わりました。
妊娠や避妊についても教わり、色々な種類の避妊具の使い方や、避妊率なども紹介されました。
コンドームに関しては実際にきゅうりやナスに付ける授業もありました。そして、クラスには小さな箱が置いてあり、性に関する質問があったら、誰でも匿名で紙に書いて入れて、先生に聞くことができます。
先生も質問に対して、大歓迎でした。先生たちは、普段の授業と変わらない雰囲気で、セックスに関しても言及することがありましたし、友達のように話してくれる先生もいました。
全体的に性に対してオープンな雰囲気があり、授業を受ける学生も、「性に興味があることは当たり前」という感覚もあり、特に「恥ずかしい」などの嫌な雰囲気はありませんでした。また、中学校にも高校にもカウンセラーがいたので、困ったときに健康のこと全般について聞ける人がいました。
先生も、止めると逆にコソコソと危ないことをしようとすることを理解していたので、「絶対ダメ」と教えられることはありませんでした。
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Jo Walda
TENGA海外社員(ヨーロッパ)
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イギリス出身で、22歳まで住んでいました。
イギリスでは大体、性教育は小学校6年・中学校3年・高校1年の時の3回行います。私個人の経験では、小6の時は主に、体の部位の名前・赤ちゃんが生まれるまでのプロセス・思春期に体がどう変化するのかという三つのテーマについて勉強しました。
男女で分かれた授業もありました。男子は夢精などについて勉強していて、女子は生理について勉強しました。小学校の時一番印象に残っている授業は、妊娠についての授業の時、クラス全体で80年代に作られたビデオを見たことです。
そのビデオは「受精のアニメーション」のあと、あるリアルカップルの妊娠から出産までの話が入っていました。
最後の実際の出産の動画は当時強く印象に残りました。中高は男子中高等学校に通っていました。
中学校・高校の授業では、交際の一部としてセックスはどういう役割をするのかという観点から教えられました。
また小学校のときは日常的なホームルームの中で先生に教えられましたが、中学校以上の性教育は生物学の先生や学校の看護師(日本での保健室の先生)によって行われました。
大体普通の授業とは別にされ、PHSE (Personal, Social, and Health Education)の授業の一部として行われました。その中で、性感染症・(当時イギリスで話題となった) 思春期の妊娠・避妊・性的同意などについて勉強しました。
性感染症をテーマにした授業では、予防はもちろんですが、実際どういう症状が出るのかという勉強もして、(おそらくインパクトがあるから)体に症状が出現する性感染症は写真も見たりしました。
もしかかる疑いがあったら「交際相手にはどう伝えるか、誰に相談できるのか、どのクリニックに行けばいいのか」など、どう対応すべきかという勉強もしました。中高生の性教育で、一番印象に残った授業はコンドームの付け方の授業でした。
中学3年生の時に、みんなにバナナとコンドームが配られて、先生に確認されながらコンドームの付け方の練習をしました。
とても恥ずかしかったですが、 33歳の私の記憶にもまだ焼きついているので、ある程度効果的な授業だったのではないかと思います。