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坂井 雄貴
家庭医・総合診療医/
一般社団法人にじいろドクターズ
代表理事 -
周りの人がどんどん声が低くなっていくと、不安になりますよね。
そもそも声変わりとは何なのかを考えてみましょう。
声変わりは男の子なら12〜15歳ごろに、二次性徴とともに起こります。
声を出す「声帯」というのどの器官の形が大きく・厚く変化していくことで起こるんですね。
これはのどの形そのものが変わることなので、声変わりを早く起こすことや、一度声変わりしたのを元に戻すことは、残念ながらできません。性ホルモンが増えて大人に変化していく「二次性徴」では、体にいろいろな変化が起こります。
例えば男の子だと精通があったり、喉仏が出てきたり、髭や毛が濃くなったり、背がぐっと伸びたり。心の変化もありますね。
体の変化に戸惑ったり、他の人との違いに悩んだり、性的なことに関心を持つようになることもあります。顔かたちや体の大きさが人それぞれ違うのと同じように、声の高さ・低さ、声の質も人それぞれ違います。
声変わりはみんなが迎えるもので、その早い・遅いも、程度も人それぞれです。
努力では変えられない人の体の特徴をネタにしたり笑ったりすることはよくないことだし、そんな心ない言葉や態度にあなたが傷つく必要もありません。あなたは今声が他の人より高いとのことですが、声出しで声が目立ったり、みんなに聞こえやすいことは素敵なことだと私は思います。
私は声変わりが早かったので、小学校高学年の頃には一人だけ声が低くて恥ずかしいなと感じたことがあるし、中学生のころには高い声で歌を歌える友人を羨ましいと思っていました。
きっとあなたの声を素敵だなと思ってくれている人も、いるんじゃないかな。焦る気持ちは分かりますが、他の人と比べすぎずに、今の自分の体に自信を持ってほしいなと思います。
そして声変わりはいずれ必ずやってくるので、「どんな声になるかな?」「いつくるのかな?」なんて考えながら、その時を楽しみに待ってみてもいいかもしれません。
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森 重智(もりしー)
小児科医/あいち小児保健医療総合センター/笑方箋
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自分だけみんなと違い、それを笑われるってすごく嫌な思いをしていると思います。
ハミングをすることで声は多少低くなることもあるので、ハミングを試してみるのはひとつの方法だと思います。
ただ、今回の質問の本質はどちらかというと”みんなと違う”という事をどう考えるかという話かなと思いました。自分の話なんだけど、自分は小学校で声変りがクラスで一番早く、みんなと違うことでからかわれて毎日が本当に憂鬱な時期がありました。
その時に色々と声の高さを変える方法を試行錯誤したけど、結局効果のあるものはありませんでした。ただ、今となって思うのは、あの頃の自分は“みんなと違う”ことに非常に敏感になっていたと思います。
長い人生の中で特に思春期は周りからの評価が気になる時期。
でも大人になった今思うのは、“みんなと違う”ってことは“自分だけの個性”なんだってことです。野球部というコミュニティーの中だと笑われるかもしれないけど、あなたはこれからの未来、色んなコミュニティーができると思うし、あなただけの個性を素敵だと言ってくれる人は必ずいるから安心して欲しいです。
日本は海外と比べて、人と違うことに対していじったりからかったりしがちとも言われているんだ。
ただ、もしこれが行き過ぎて、”イジリ”が”イジメ”になったりすると、多様性を認めずに相手を傷つけるという”人権侵害”の話でもあるんだ。見た目や声はわかりやすいけど、性格も考え方も人はみんな違う生き物。
それを尊重できる人が素敵な人だと思います。最後に、今あなたが感じている苦しい気持ちは消して無駄にはならないのは忘れないでほしいです。
今はもちろん将来、”大多数の人と違う”ことで笑われて傷ついている人がいたら、あなたが今傷ついた分だけその人の気持ちに寄り添えるし、それは個性なんだよって伝えてあげられる強い優しさを持っているということだから。