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染矢 明日香セイシルアドバイザー/NPO法人ピルコン理事長
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私は中絶の経験があります。また、中絶を経験した人の自助グループ(同じような経験がある人が集まり、経験や気持ちを話したり聞いたりする会)を運営していて、他の人の話もたくさん聞いたことがありますが、痛みの感じ方は人それぞれ個人差が大きいように思います。また、体だけではなく心への影響もあります。中絶はどんな処置なのかを知っておくと、不安の軽減にもつながると思います。
妊娠12週未満の初期中絶の場合は全身麻酔での手術のため、痛みをほとんど感じなかった人もいれば、子宮口を広げる前の処置や、麻酔があまりきかず手術での痛みを感じる人もいます。
また、妊娠12週以降は人工的に死産をする中期中絶手術となり、より心身への負担は大きくなります。
中絶をするのではあれば、早い時期の方が負担は少ないです。手術後は無理せず安静に過ごすことがおすすめされます。ただ、「中絶は痛いのが当たり前」「自業自得だから痛くても仕方ない」と思っている人がいたら、それは違うと思います。
中絶は罰ではなく、医療行為です。
思いがけない妊娠は気をつけていたとしても起こることがありますし、また望んだ妊娠だったとしても産むことが難しい状況に変わることがあります。「セクシュアル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」といって、全ての人がいつ、何人子どもを産むか、産まないかを決められ、そのために必要なサービスを受けられることは権利なのです。
そして、一度の中絶手術で不妊になるということは今はほとんどありませんが、何度も中絶を繰り返すことで流産しやすくなることが分かっています。
もし中絶をした後の痛みや心のケアで悩むことがあったら、信頼できる婦人科やカウンセラーに相談することもできることも知っておいてくださいね。
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遠見 才希子産婦人科医
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日本では妊娠12週未満の初期中絶は、手術が行われます。
手術前に子宮の出口を開く処置を行うことがあり、個人差はありますが痛みを伴います。
手術中は点滴で麻酔薬を入れ、眠った状態にするため基本的に痛みは感じません。
手術は10分くらいで終わります。術後数日間は、生理痛のような痛みを感じることがあるため痛み止めを使って和らげます。
特に金属製の器具を使う掻爬(そうは)法という手術では、子宮の壁を傷つけてしまう可能性などがあり、将来、不妊症の一因になるということがごくまれに起こります。
絶対にそうなるというわけではありません。海外ではそのようなリスクが少ない手術として、柔らかいプラスチック製のキットを用いた手動真空吸引法が主流です。日本でも2015年からこのキットが認可されました。
さらに海外では、安全な中絶方法として飲み薬が認められている国が多くありますが日本ではまだ認められていません。また、妊娠12週以降の中期中絶は手術ではなく出産をします。子宮の出口を開く処置をした上で、腟から薬を入れて陣痛を起こします。陣痛、出産には痛みを伴い、数日間かかることがあります。希望があれば別料金でいわゆる無痛分娩を行っている医療機関も少なからずあります。
中絶だけでなく、流産や子宮内胎児死亡(妊娠出産を望んでいたけれども、胎児の発育や心拍が止まってしまうこと)という状況でも、基本的に同じ処置が行われます。私は一産婦人科医として、中絶、流産、どちらにしても、より安全で女性の健康が守られる、体の負担も心の負担もできるだけ減らす方法を選択できる必要があると考えています。
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モヤパン性のモヤモヤから生まれた妖精
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