
最近巷でオナ禁というのが流行っていますよね?
オナ禁をするとテストステロンというホルモンが上がるので、自己肯定があがったり、女性にモテやすくなったりするといった説があります。実際のところ、どうなんですか?
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今井 伸泌尿器科医/聖隷浜松病院リプロダクションセンター センター長
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オナ禁ねぇ。
そっかー、そんな理由でオナ禁が流行ってるんだー。
「数日ガマンした後のオナニーが気持ちいいから」とか「夢精はむちゃくちゃ気持ちいいから夢精したいため」にオナ禁するっていうのならわからんでもないけど。
「オナ禁するとニキビが治る」とか「オナ禁するとはげにくくなる」とか「オナ禁するとモテるようになる」とかいろいろな「オナ禁の効果」がまことしやかな解説されているけど、多くの「オナ禁」を語るサイトでも断り書きがあるように、「オナ禁は○○に良い」説に医学的根拠は全くないんだよ。
僕が高校生だった1980年代には、「オナニーするとニキビがなくなる」とかオナニーに肯定的な説もあった。
今の逆だね。医学的根拠はないのは一緒だけど。そもそも、思春期になってテストステロンが上がってくるからオナニーをしたくなるのであって、オナニーの有無でテストステロンが上がったり下がったりするのではないのでね。むしろ、医学的にはたくさん射精したほうが良いことが多いくらいなんだ。精子の状態が良くなるとか、前立腺癌になりにくいとか。
ぼくは自他ともに認めるオナニー推進派。オナニー解放運動を先導してきた(!?)立場としては、この「オナ禁は良いことづくめ」みたいな説が広まっていることに驚くとともに、少々残念な気がしてるんだ。実は、日本では明治時代になって西洋から入ってきた「オナニー有害説」が広まり、「オナニーは心身に悪影響を与える」と考える人が多くなっていったんだ。有名な「オナニーすると頭が悪くなる」とか「オナニーすると背が伸びなくなる」といった説は、この頃からオナニーを禁止する殺し文句として使われていたのだ(もちろん全部ウソだけど)。
そのころから、ぶっちゃけ日本の国の方針として「オナ禁」を推奨していた時代が長く続いていたんだ。オナニーは有害だけど、したくてたまらなくなってしまう。みんなのおじいちゃんたちより昔の若者たちは、罪悪感に苦しめられながらオナニーをしていたんだと思うよ。それを、多くの人たちの努力によってオナニーに害のないことが証明されていって、1970年代以降になってようやく「オナニーは無害である」と教科書にも書かれるようになり、ようやく気兼ねなくオナニーができる時代がやってきたんだよ。ビバオナニー!オナニー万歳だよ。余談が長くなってしまった。本題に戻そう。
でもまあ、信じる者は救われるとも言うし、「オナ禁の効用」を信じたければ信じてもいいよ。試してみるのは個人の自由だから。でも、「オナ禁の効用」はあくまで個人的な感想であり、個人によって感じ方に差があるので、効果は期待しない方がいいと思うよ。
結論:オナニーをしたい人はどんどんすればいいし、禁欲したい人はすればいい。でも、オナ禁によってなにか特別な効果があると期待するのはやめたほうがいい。