BLが好きなのはダメ？

「男同士の恋愛が大好き」は100％ＯＫ！
失礼にあたりますか？ってことは、自分は同性愛者とはっきり分かっているわけではないけれど、ＢＬ好きは同性愛の人に対して失礼かなって気にしてくれたのかな？
それって同性愛の人が居るってちゃんとわかっていて、しかも同性が好きな人に対するリスペクトにもつながることだから、私は嬉しいって思ったよ。

好きって気持ちは自分の中から自然に湧いてくるものだし、好きなことがあるって生きるエネルギーにつながるよね。だから大事にしてね。
何が好きか嫌いか、何をしているとき幸せを感じられるか自分らしく居られるか、などをしっかり見つめていくことで自分のことが分かっていくと思う。その時間って自分を大事にするってことでもあると思う。
その上でだけど、ＢＬは、他のマンガや物語と同じようにフィクションだし、作者や読者の願望も入ってドラマチックに仕上がっている部分もあるので、実際の男性同士のカップルとは大きく違うところも多いことを分かっておいてね。

ところで、あなたがＢＬが好きという理由の一つとして、女らしさ・男らしさへの反発があるかもしれないね。
マンガ研究の中でも発表があったんだけど、異性愛のマンガは男子がリードして女子はついていく、という男女が固定的な役割で描かれているものが結構あって、ＢＬは性別が同じだから対等な関係で、純粋に恋愛ものとして楽しめるって感じて選んでいる人も多いんだって。
もちろんＢＬでも対等でない関係を描いているものもあるけど、より少ないってことらしい。そのあたりも探ってもらえると自分のことがより理解できるかも。

日本はジェンダーギャップ指数という世界の男女格差ランキングで、格差が大きいことが分かっているんです。あなたの感じていることは社会の課題とつながっているし、そう感じているのは一人じゃないんだということも知ってもらって、社会の中の私、ということにも想いを広げてくれたら嬉しいです。

まずはBLがダメなのかと違和感を持った自分を褒めて欲しいし、もちろん、BLが大好きなその気持ちは無視して欲しくない。

BLや同性同士の恋愛モノを楽しむのが良いか悪いかは私には判断はできないけど、BLの背景にあるものを考えるきっかけになるといいなと思う。

例えば、少女マンガのようなシチュエーションや恋愛は多くの場合、現実には起こりえないことや性的同意を無視したもの、主人公は偏見やステレオタイプ的に描かれることも多いよね。

BLも同じだと思ってて、フィクションであることと、偏見やステレオタイプ的な描かれ方がされる可能性があることを知ることがまずは大事だと思う。

あとは、実際に今の日本では男性同士や女性同士で結婚をすることが法的に整備されていないことや、様々な場面で差別されている現状も知るだけでも私は嬉しいな。

「『ゲイ・セクシャルの男性』に対して失礼にあたるか」という質問ですかね。

私も長年BL作品を愛読していますが、BLを好んで読む人同士で、そういった話になることがあります。そして90年代にも、ゲイ・セクシャルの男性とBL愛好家のあいだで、同じような議論があったようです。

90年代の初めに、女性誌を中心に「ゲイ・ブーム」と呼ばれる動きがありました。ゲイ男性が雑誌に取り上げられて、「ゲイの友達がいるとイケてる」といったことが、たくさん書いてあったそうです。

このブームによって、「自分たちの仲間がこんなにいるんだ」と当事者の方が勇気づけられたり、自分を肯定できるようになったり、よい影響がたくさんあったようです。

一方で、雑誌でもてはやされるのは「おしゃれで個性的な」ゲイ男性でした。「自分たちにとって都合のよい、一部のゲイ男性だけを取り上げて、それ以外の人は『見えない』状態にされている」という声も挙がっていたそうです。

これと同じことが、BLを読む人にも言えるんじゃないかなと思っています。

「男性同士の恋愛が大好き」。この気持ち自体は大事にしてよいことだし、素敵なことです。ただ、自分がもし実際に「男性と恋愛している男性」と知り合う機会があるとしたら。「男性同士の恋愛ってこうなんでしょ？素敵だよね」「BL漫画でこういうシチュエーションを読んだんだけど、実際にそういうことってするの？」といった質問をしたら、相手の人は「この人、自分じゃなくて『男と恋愛する男』にしか興味がないんだな」と思って、失礼に感じるんじゃないかと思うんです。

そういう時に「自分の理想」を押し付けず、相手を「人間」として見て接することができれば、自分が何を好きでも全然OKだと思っています。

ちなみに、この回答は溝口彰子さんの『BL進化論』という本を参考にしつつお答えしました。もし興味があったら、ぜひ読んでみてください。